パラ馬術競技の規定とは?グレード・見どころについて

パラリンピックの公式競技に「パラ馬術競技」があります。
パラ馬術競技をしている方は、
「馬術競技を続けてパラリンピックへ出場すること」
を目標としておりパラリンピックへの出場と、そのための騎乗技術向上に日々励んでいる方が日本のパラ馬術競技を支えています。
パラ馬術競技に出るためには、まず乗馬ができる障害でなければなりませんが、そんな乗馬ができる障害の方でもごく一部の人がパラ馬術競技へと進みます。
パラ馬術競技とは、通常の馬術競技とどのような違いがあるのか、そして見どころをご紹介します。
この記事の目次
パラ馬術競技に参加できる障害
肢体に不自由のある方と、視覚に障害がある方がパラ馬術競技に参加できます。
(パラ競技は、身体障害者のみ出場可能で、知的障害者などの他の障害は出場不可能です。)
生まれつき身体に何らかの障害を持っている方や、健常の時から活躍していた馬術選手が事故や病気によってパラ馬術へ転向することもあります。
パラ馬術競技は、通常の馬術競技と同じく男女混合で行われますが、「馬場馬術のみ」で競技が行われます。
競技種目は、個人課目(インディビジュアルテスト)・団体課目(チームテスト・オープンクラス)、個人課目の上位選手が出場する自由課目(フリースタイルテスト)は音楽付きで選手がオリジナルの経路を演技します。
パラ馬術競技の「グレード」とは
選手たちは自身の障害の程度によって、出場する「グレード」が違います。
グレードはⅠ~Ⅴまであり、グレードによって競技内容と馬場の大きさが違います。
パラ馬術競技を目指す際には必ずクラシファイアー(認定された資格を持つ医師・理学療法士)による、クラシフィケーション(クラス分け)をしなければなりません。
クラシフィケーションによりグレードが認定され、選手の登録が行われます。
馬場の大きさ
グレードⅠ~Ⅲ | 20メートル×40メートル |
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グレードⅣ・Ⅴ | 20メートル×60メートル(通常の馬術競技と同じ) |
競技の歩様と障害の目安
- グレードⅠ:常歩
- 車いす利用者。上体・下肢の筋力が非常に弱い、またはまったくない
- グレードⅡ:常歩・速歩
- 車いす利用者。おもに下肢に障害があり、上体の筋力なども比較的弱い
- グレードⅢ:常歩・速歩
- 車いす利用者。上体はほとんど、もしくはまったく障害がない
- グレードⅣ:常歩・速歩・駈歩・二蹄跡運動
- おもに両上肢に大きな障害がある。全盲の方
- グレードⅤ:常歩・速歩・駈歩・二蹄跡運動
- おもに上肢に障がいがある。弱視の方
こちらに示した障害の程度はあくまで目安です。
クラシファイアーはおもに筋力、可動域、筋肉の協調を判断材料にします。
それ以外に、視力や脳障害などもクラシフィケーションを定める基準になります。
選手によって車いすを利用していなくてもグレードⅠやⅡになる方もいますし、下肢に障害があってもグレードⅣに認定される場合もあります。
運動の主体は馬であり、その人の身体機能がどのくらい乗馬や馬術に適しているか、乗馬や馬術をする上において有利な面、不利な面を総合してポイント制にしてクラシフィケーションを行うからです。
病状が変化した場合には、グレードが変更されることもあります。
また競技時間の目安は、その時の経路によりますが、全グレード同じ時間です。
パラ馬術競技では馬具と補助器具も重要
馬と協調した騎乗をするために、手綱・鞍・鐙の改良が認められています。
また下肢による指示を伝えることが困難な方は、鞭の使用を障害の程度によって2本まで、長さは120センチまでのものが認められています。
手綱を両手で持てない場合、健常者であれば束ねて片手で持てると思いますが、障害によって束ねた状態でも持てない、持った時の拳の位置が適切な場所にならない方もいらっしゃいます。
そのような時は、クラシファイアーの助言などによって手綱を改良します。
その人にあっておりなおかつ馬の動きを阻害しない国際規定に沿っている改良をした馬具はクラシファイアーの許可を受け、馬具や補助器具を大会出場時に申請する必要もあります。
また下肢に障害があり、足がぶらついて馬に間違った指示を出してしまう時は、落馬しても壊れやすく安全性の高い固定方法を考える必要性があります。
そのような時はどのような補助器具を使うことが適切かを決めることが重要です。
いつも装着している義足が馬の動きを阻害しない適切なものなのかなど、その人に合った補助器具の選定も重要です。
このような配慮はパラ馬術競技をするうえで必要なことですが、パラ馬術競技自体は健常者と同じ技術を要求されます。
パラ馬術競技はスタッフとのチームワークも見どころの1つ
頭部外傷などにより脳障害があり馬場表記の位置や経路を覚えられない方の場合、「コマンダー」が馬場外から経路を伝えることができます。
また視覚障害を持っている方は、「コーラー」の声を頼りに次に行く場所を把握しています。
最大13人までコーラーを配置できますが、慣れてくると人数が減っていきます。
騎乗する選手が最大限の能力を発揮できるよう、ひとりひとりの役割をきちんとこなし、お互いに信頼関係を持ち、全員で競技に挑んでいます。
チームワークが問われる場面を多々見ることがあり、そのような部分を観戦できることも見どころの1つです。
これからパラ馬術を目指そうとされている方はこの記事を参考にぜひ競技に転向して、日本のパラ馬術会をさせていただきたいですね!